Tアップ──相手を立てる人が、組織を立てる
高橋純
大久保課長からの社長講義で、
「部下が幹部のような報連相ができないのは当たり前。利き手が違うようなものです」という話がありました。
そこで「では、どうすればいいのですか?」という質問が出ました。――いい質問です!
▼2025年9月第26期経営計画発表会にて 社員による投票で最優秀社員賞に選ばれた大久保課長
■できないことに腹を立てる前に
▼上司と部下の仲はもちろん、社員全員仲が良いのがエンジョブです。

上司も部下も、「なんでこんなこともできないの?」「前にも言ったよね?」とつい腹を立ててしまうもの。
でも冷静に考えれば、それは「相手が理解できない」だけのことも多い。
人は皆違い、得手不得手も違う。自分の常識は他人の常識ではありません。
この当たり前を理解していないと、人間関係は悪化します。
「できなくて当たり前」「理解できなくて当たり前」と考え、
何度でも根気強く伝えることが大切です。
一回で分かる人もいれば、100回必要な人もいます。
■「自分にも苦手がある」と自覚する

誰にでも不得意なことがあります。
その事実を忘れると人は傲慢になり、指摘ばかりするようになります。
どんなにすごい人も、誰かの支えがあって成長してきました。
してもらった恩を忘れず、上からではなく「与える姿勢」で関わることが大切です。
■Tアップとは何か
▼誰もが認める社内No.2の多田課長
入社当初から伝えている「ストローク(相手を認める)」、その上位版が『Tアップ』です。
たとえば誰かを紹介するとき、
「うちで一番仕事ができる◯◯課長です」と先に立てておく。
それだけで、その後の商談や会話がスムーズになります。
Tアップとは"相手の価値を前もって伝え、信頼を生み出す技術"です。
■家庭でも自然に行われている

うまくいっている家庭は無意識にこのTアップを使っています。
「お父さんが頑張ってくれてるおかげでご飯が食べられるんだよ」と
母親が伝えると、子どもは父親を自然に尊敬します。
逆に、愚痴を聞かされて育った子どもは、
父親が正しいことを言っても受け入れません。
――つまり「日常のTアップ」があるかどうかで、
"肝心なときの言葉の響き方"がまったく変わるのです。
■ビジネスもまったく同じ

上司は部下を、部下は上司をリスペクトし、
日頃からTアップできていなければ、
いざというときに何を言っても響きません。
上司の悪口ばかり言う人、部下を責める上司。
そうした職場ほど業績は悪く、離職率も高い。
そんな環境では新人が続くはずがありません。
会社は一致団結してこそ強くなります。
誰もが「収入を増やしたい」「休みを増やしたい」と願っているのに、
真逆の行動を取ってしまうのは、考え方を理解していないからです。
■クレーム対応にも表れるTアップの力

このTアップの考え方は、クレーム対応にもはっきり表れます。
人は困難に直面したときこそ"本心"が出ます。
普段「愛してる」と言い合うカップルが旅行で喧嘩するのも同じです。
クレームの現場で詰められると、
「◯◯さんのせいで」「社長に言われてやっただけです」と
つい他人のせいにしたくなるものです。
気持ちは分かりますが、それで信頼は得られません。
たとえ原因が他にあっても、
外部には"擁護する姿勢"を見せる。
それが信頼される人の行動です。
もし家庭でトラブルが起きたとき、
伴侶や子どものせいにする人を見て「立派だ」と思うでしょうか?
きっと信頼を失います。
クレーム対応も同じです。
その場を逃れることはできても、信用は必ず落ちます。
「自分の保身のための謝罪」なのか、
「会社を代表しての謝罪」なのか――
その違いが、あなたの成長を決めます。
少しの勇気を出して"自分を超えた対応"をしてみてください。
その一歩が、信頼と評価を大きく変えるはずです。
■まとめ
▼強いチームのエンジョブ。お互いに協力し助け合える仲間として日々業務に取り組んでいます。

Tアップとは、相手を立て、支え、認めること。
お世辞ではなく「事実をもとに良いところを伝える」行為です。
日常の一言、クレームの一瞬、そしてチームの空気。
すべてにこの考え方が表れます。
相手を立てる人が、組織を立てる。
それが"Tアップ"の真の意味です。
▼2025年10月に行われた、生徒数444名、教員38名、約500人の講演の様子です。



















