親心
石田由香
先日、会社の厚意で家族旅行に行ってきました。ありがたいことに、宿泊費は家族分も会社から支給していただけました。
妹が結婚に伴い嫁ぎ、私も出産をし、なかなか家族全員で旅行に行くことなどなくなってしまいましたが、社長のおかげで妹夫婦や甥っ子、母と息子で温泉旅館に泊めさせて頂きました。
私が勤務している間、息子の面倒を見てくれているのは定年退職した両親です。残念ながら今回は、祖母の介護のため父は参加ができませんでしたが何とか母だけでも連れて行くことができました。
去年生まれたばかりの甥っ子、つまり母にとっては私の息子に次いで二人目の孫も連れての初めての旅行で、何とも言えない幸せそうな時間をすごしていました。
孫二人と母の、まったりした時間を過ごす姿を見ながら、親孝行できている実感が沸き、私も幸福気分を味わえました。
今回連れて行ったうちの子も、今年からピカピカの一年生です。食が細いせいか背も低く、背の順で並べば一番前とかそんな感じです。一緒に連れて行った甥っ子くらいの赤ちゃんの頃からよく会社に遊びに来て、人見知りが激しい子だけど、会社のみんなにはなぜか馴染んでくれています。初対面のお兄ちゃん、お姉ちゃん社員でも、全然へっちゃらです。やはり小さい頃から触れ合ってきた安心感があるのだと思います。
先日も、会社でケーキをもらって社員さんに混ざって食べてました。以前は母である私にべったりで、幼稚園に行くのに着替えるとか着替えないとかでぐずり、大騒ぎしていたり、拗ねると物置に入り篭城したりと相当手のかかる人でした。
そんな彼も、小さい背中に重たいランドセルを背負ってえっちらおっちら集団登校について行こうと必死の毎日です。幼稚園や保育所から小学校に上がるということは、馴染んだお友達と離れて知らない人の中に入っていく。しかも、全然体の大きさの違う6年生の子達に混ざって登下校したり掃除をしたり...。大人の私達にしたら、転職して新しい会社に行くくらいの生活の変貌が訪れています。ちゃんとお友達ができるのか、足の速い年上の子の歩くスピードに追いついていっているのか、何か困っていることはないのか、友達に冷たくされていないのか、考え出したら気が狂いそうになります。
そんな母の妄想に近い心配をよそに、子供はとっとと成長し、気づかないうちに一人でお買い物にも行けるようになっていました。子供の成長は本当に早いです。
学校で、友達とうまく行っていないようなことをチラッと聞くと、母は夜も眠れず心配しています。食が細ければどうしたら食べてくれるのだろうと考えてしまいます。集団登校の初日などは、重い背中のランドセルの重力でひっくり返りそうになりながら、初対面の年上の子達に一人でいきなり混ざり、何の説明もなく列になって歩いていく...。その姿を涙目になって見送っていました。重い荷物を持っていく日などは、その荷物を先に車で届けて置いて上げようかと、真剣に葛藤しました。過保護なことは重々自覚していますが、それでもそうしてあげたい自分との戦いでした。しかし、ほかの登校班を見ると、荷物を持ってあげてついて行っているよそのママの姿を何人か見かけました。自分の気持ちと同じ人ってたくさんいるものなのです。
しかし、思い返せば私も子供の頃は泳げないから水泳の時間が嫌で学校に行きたくないとか、友達からハブられてるけどそれを親に言えずに仮病を使って学校に行きたくないとか、九九がどうしても覚えられないと大泣きしたり、習い事に行きたくないとか、もうやめたいとか、鼻血ばかり流しているとかありました。母は気にもしていない様子でしたが、気にもしていないふりをしていただけで、実は相当心配していたんだなと、子を持つ親の立場になってやってわかった今日この頃です。
そして、それは会社でも同じです。毎年新入社員の方が入ってきてくれています。当然、初々しいし、たどたどしいし、毎年新年度に入ってから今の時期までは、見ていてハラハラしどうしです。できないことばかりだから、しょっちゅう壁にぶつかっているし、乗り越えられなくて涙を流したり、悩んでいる姿を見たり、落ち込んで元気がない様子を見たりしていると、当然無関心ではいられません。上司からきつめの指導を受けている時は、割ってかばいたくなる時もあるし、実際そうしてしまう時もある。慰めながら、面談しながらどんな言葉をかけたら新入社員さんが元気が出てくるのか、モチベーションが上がるのか。考えていないようで、先輩は考えているのです。だから、新入社員さんの後ろには、ご両親だけでなく先輩と言う応援団がいるのだと思って欲しい。
つたないながらも、一生懸命に立ち向かっているその姿から先輩達は元気をもらっているのです。私も重いランドセルをしょった子供の姿を見ながら、いつも自分も頑張ろうと言う元気をもらっています。同じように新入社員さんの真剣な姿は、先輩達の心を動かしているのです。その姿が真剣であればあるほど、先輩も応援したくなるし、先輩を勇気付けていることになっているのです。最初は上手にできないことが多くて、葛藤したり悩んだりしているだろうけど、その今のいっぱいいっぱいな姿が人にプラスの感情を与えていると気づいて欲しいなと思います。
そして、できなくてもできなくても、諦めずに努力を続けていつか壁を越える姿を見ることが、先輩達にとっての至福の喜びになっているのです。ちなみに、上記の画像はわが社の朝礼の一幕です。新入社員さんでなくても、仕事をしていればどのステージに立っていても壁は訪れます。その壁を避けずに挑むその姿は、自分が意識していなくても周りの人にモチベートしているのです。真剣にやっていれば、必ず誰かが見ていてくれています。気づいてくれます。もしも、うまくいかない、周りが協力してくれないと嘆いているのであれば、まだ真剣度が足りないのかもしれないです。うちの社長がよく言っています。「ありとあらゆる方法を取ってできないと言っているのか?」と。うまく行かない時に、立ち止まって「ありとあらゆること」について自分はどうなのかを考えてみて欲しい。