年齢は関係なかった
石田由香
もうすぐ入社式を控えて、社内がソワソワし始めました。
社員もネコも、新しい仲間が入ってくるのを待ち遠しく感じているこの頃です。
最近、巷の一部ではストリートピアノが流行りだしてきています。
都会の駅だとか、都庁だとかにしかなかったストリートピアノが、とうとう地元のショッピングセンターに設置されました。
ストリートピアノとは、「どうぞご自由に弾いて下さいピアノ」のことです。
欧米ではメジャーで、道行く人が気軽に弾いています。
私もちょっとはピアノをかじったことがあるので、「なんか一曲マスターして弾いてみたい」と思いながら、忙しい日々に流されて練習ができない日を重ねています。
さて、そんなピアノの世界でピアノに関してド素人なのに有名なおっちゃんが出現しました。
ストリートピアノ、略してストピ。
その世界で有名なYouTubrが何人かおりまして、寝付けない夜にたまたま見てたところ、「関連のある動画」として出ていたおっちゃんの動画を見てたまたま知りました。
知っている人は知っていると思います。
佐賀県の海苔漁師の徳永さん59歳です。
このおじさん。
正真正銘の海苔の漁師さんです。
ピアノの経験は全くないです。
趣味もなくパチンコに明け暮れ、ある時2ヶ月で70万円もパチンコに突っ込んでしまったそうです。
嫁の財布からお小遣いをネコババしようとしたら「取るな」と書かれて紙が入っていて、それを見てパチンコをやめる決意をしたそうです。
しかしパチンコをやめたものの、趣味もなくて暇でテレビを見ていたら「フジコヘミング」と言う人の演奏が流れていました。
名前は外国っぽいけど、日本の有名な80代後半のピアニストです。
結構ブッ飛んでるピアニストで、個人的に好きです。
そのフジコヘミングが弾いていた、リストと言う大作曲家が作った「ラカンパネラ」と言う曲を聞いて「いい曲だ」と思ったそうです。
自分も弾いてみたいな、やってみようかな。
と言ったところ嫁に「弾けるわけがない」と言われたそうです。
嫁は音大を出たピアノ教師で、私が弾けないのにあなたが弾けるわけがないでしょう。
という理屈です。
まあ、ごもっともな話です。
私も、3歳からピアノを始めて高校を出てピアノの勉強をしに進学しました。
現役の時に本気で練習したとして、ラカンパネラを弾けたかどうか。
どうにかこうにか弾けたかもしれないけど、人に聴かせるに堪えうるレベルにはならなかっただろう。
そんなくらいに難易度の高い曲です。
嫁に「無理だ」と決めつけられて火が付いたおっちゃん。
やったるわい。
と練習に取り組み始めました。
しかし、このおっちゃん 当然のことながらピアノを触ったこともなければ、楽譜なんて読めません。
楽譜を見んで、どうやって弾くねん。
ちゅう話です。
そこで考えて、よくある音楽ゲームみたいに、その音が弾くタイミングが来たら弾くべき場所の鍵盤が光る。
そんなイメージのYouTubeの動画を見ながら、練習を始めたそうです。
つまり楽譜は一切見ずに始めたのです。
ピアノを弾く人から考えたら非常識も非常識。
ありえない話です。
そんな無謀な練習法で、毎日8時間練習したそうです。
欠かさず毎日です。
当然、本職は海苔漁師だから朝は早いです。
その努力を続けた結果、1年後には弾けるようになったそうです。
その時の徳永さんは50代前半。
毎日8時間の練習を7~8年毎日続けて現在50代後半です。
しかもそのことが話題になって、テレビで取り上げられ本物のフジコヘミングの前でラカンパネラを聴いてもらえたと言う...。
今では有名なおじさんになってしまい、演奏会などを開いているそうです。
最近、会社では色んな改革が始まっています。
会社の仕組みが変わるのはいいとして、新しい機械の導入だとか、新しいソフトの導入とかって、勤続年数20年超えの自分にはマジできついです。
先日も、グーグルが提供しているソフトやら、自社システムの使ったことのない画面やら、LINEを駆使して新しい仕事を覚えるという体験をさせてもらいました。
指導してくれた多田さんは、とっても優しいのでこんな私にでも分かるように、ゆっくり進めてくれて、説明もめっちゃ丁寧にやってくれました。
それでもついていくのに必死で、半分も理解できたのかどうか...。
「若かったらもっと早く理解できたのだろうな」
と正直思いました。
そう言えば、20代の前半に勤めていた会社で資格を取る為、何日か講習に通ってました。
同業他社で受ける人が何人か集まっていたのですが、その中のアラフォーだったかな?アラフィフだっかな?
一人がなかなかついていけず、スルスルと理解していた私に
「若いと理解が早くていいわね」
と言いました。
20代前半の私からしたらその発言をした人はオバチャンですが、今の私よりその人は若かったかもしれないです。
その人の発言を聞いて、若かった私はこう思いました。
「若いから理解が早いんじゃなくて、
自分の年齢のせいにしているあなたの理解度が元々低いんじゃないの?」
そうです。
その時の私はめちゃくちゃ高飛車でした。
若いって怖いです。
その20代の頃の自分の発言を思い出して、今の自分に向けてみたらめっちゃ当てはまってしまい、ガビーンとショックを受けました。
そうだよね。
年齢のせいにしちゃいかんよね。
何歳であっても、努力次第で無理なことも可能になる。
海苔漁師のおっちゃんが証明してくれています。
ただ、自分には毎日8時間の練習を続けることができないだけです。
それを年齢のせいにしているのだなぁ。
と反省している最近です。
このブログを読んでいる人は20代かもしれないし、もっと若いかもしれない。
同じことを習得するにしても若い頃の方が、年を取ってから習得するより短い時間で済むのは間違いないです。
脳も若いし、身体も若いのだから。
何歳になっても努力を続けることは大切だけど、努力をする練習は若い頃からした方がいい。
「頑張る」ことを毎日続けていけば、継続することで心も体も耐性がついて、頑張らなくてもできるようになってます。
頑張ってたことが当たり前になってしまい、頑張っている感覚がなくなり「日常」になります。
そして更に負荷をかけることによって、もっと耐性がついてその繰り返しが自分を成長させてくれます。
今の私でもラカンパネラの楽譜は読むことはできます。
どういうリズムでどの音をどの鍵盤を弾けばいいかは読めばわかります。
でも、まともに弾けるようになるまで毎日欠かさず練習するのはとても困難です。
それ以前に、楽譜は読むことは可能だけど、指で弾いてみることを考えるだけで嘔吐しそうです。
やる前から避けたいとか考えそうです。
そんなことを楽譜も読まずにやってのけた海苔漁師のおっちゃんに負けないように、ちょっとしたことから努力を重ねてまだまだ長い人生を成長し続けていきたいです。